歩くことは、特別な運動ではありません。
でも、一日の中で、いちばん繰り返している動きですよね。
通勤や買い物、ちょっとした移動。
気がつけば、僕たちは一日に何千、あるいは数万歩も歩いています。
もし最近、歩くと疲れやすいと感じるなら_____
膝や腰がなんとなく重いと感じるなら_____
少しだけ「足の裏」に意識を向ける時間を作ってみてください。
足にはアーチがあります。
よく「アーチを上げましょう」と言われますが、
実は足はただ持ち上がっていればいいわけではありません。
足のアーチには大きく二つの役割があります。
・ひとつは、地面からの衝撃をやわらかく受け止めること。
・もうひとつは、身体を前へ送り出すための推進力を生み出すことです。
歩き始めの足は少し柔らかく、衝撃を吸収します。
そして一歩を踏み出す瞬間には、足の裏に張りが生まれ、足はぐっと硬くなります。
この切り替えがうまく起こると、歩きはとてもスムーズになります。
そのスイッチになるのが、親指です。
一歩踏み出すとき、親指(母趾)が自然に伸びることで、足の裏に張りが生まれます。
足底には「足底腱膜」という強い組織があります。
親指が伸びると、この足底腱膜がピンと張り、内側のアーチが自然に持ち上がります。
この仕組みは、専門的には
「ウインドラスメカニズム」
と呼ばれています。
難しい名前ですが、やっていることはとてもシンプルです。
足の裏が少し張り、ぐにゃっとした状態から、
地面をしっかり押せる足へと変わります。
その変化が、脚を効率よく前へ運んでくれます。
レッスンでも、よくお伝えしていることがあります。
「母趾球(親指の付け根)でしっかり押して〜」
「足指には力を入れすぎないで〜」
と。
そうすると、足の裏に自然と張りが生まれます。
この張りが生まれると、足のアーチが働き、身体を前へ送り出す準備が整います。
スタジオで行っているマシンのエクササイズの中にも、この仕組みを感じやすいものがあります。
「フットワーク」という動きです。
仰向けの姿勢で足をバーに置き、膝の曲げ伸ばしをするエクササイズで、
レッスンの最初の方に行うことが多いです。
レッスンでは、足の位置や角度を少しずつ変えながら行っています。
母趾球で押す位置、踵で押す位置、つま先の向き、足首の角度 など
こうした小さな違いが、足のアーチや足の裏の張り方に影響します。
何気なく行っている動きですが、実は足の裏の働きを整えるための、とても大切な練習でもあります。
もし親指がうまく使えなかったり、足の内側が潰れたままだと、足はうまく “しなれ” ません。
その代わりに、膝や股関節が余計に働き、結果として腰に負担が集まることもあります。
今、立ったまま試してみてください。
足指(5本すべて)を軽く浮かせると、
母趾球を感じられると思います。
では、そっと床に戻してみましょう。
足の内側がふわっと持ち上がる感覚があれば、そのスイッチは入り始めています。
次にそのまま数歩、歩いてみる。
地面を押す感覚が、少し変わるかもしれません。
歩き方を無理に変えなくてもいい。
姿勢を意識しすぎなくてもいい。
足の裏が、きちんと働いていること、
それだけでも、歩きは少しずつ変わっていきます。
足は、身体の一番下にあり、唯一地面と接しています。
でも、姿勢や歩き方は、そこから静かに変わっていきます。
今日の一歩が、少し軽くなりますように。
脇田達也